コラム
「楽しいが原点、理論が武器」プロスノーボーダー・鬼塚雅

幼少期からスノーボードが生活の一部で、自然体で続けてきた結果、オリンピックの舞台に立つまでに成長した鬼塚雅選手。彼女の原点は「楽しい」という純粋な気持ちにあります。
大学で栄養学や解剖学を学び、理論的に競技へ向き合う姿勢を身につけたことで、その実力はさらに磨かれていきました。今回は、本人へのインタビューを通じて築いてきた歩みと、挑戦を支える考え方に迫ります。
【鬼塚雅】プロフィール・経歴
1998年10月12日生まれ、熊本県熊本市出身。5歳からスノーボードを始め、幼少期より国内外の大会に出場。高校時代には第1回世界選手権スロープスタイルで優勝し、男女を通じて史上最年少での世界選手権優勝を達成しました。
2020年のX GAMES ASPEN BIG AIRではCABダブルコーク1260を成功させ初優勝を飾り、世界のトップライダーとして地位を確立し、2023年の世界選手権ではスロープスタイルとビッグエアの両種目でメダルを獲得。日本女子スノーボード界を代表する存在で、今後もさらなる飛躍が期待されているアスリートです。
競技との出会いと五輪種目化
-スノーボードとの出会いは何歳の頃だったのでしょうか?
始めたのは5歳の頃です。週末になると家族でゲレンデに行くのが当たり前で、“今週末も行く?”が合言葉みたいになっていました。自然と生活の一部になっていて、大会に出ていたのも“楽しいから”でした。
-早くから大会にも出られていたそうですね。
小学1年生の頃にはもう出ていました。ただ、その時はあくまで遊びの延長で、結果どうこうより「楽しいから続けている」という感覚でした。両親も「プロにさせよう」という感じではなく、一緒に楽しんでいて自然体でサポートしてくれていました。
-転機は中学生の頃。自分が取り組んでいたスロープスタイルがオリンピック種目に加わった。
最初からオリンピックを目指していたわけではなくて、途中から競技自体が種目になったんです。だから少しパターンは違うのかなと思います。親の方が意識は強かったと思いますね。私は当時、小中学生で詳しくは分かっていなくて、“すごい大会なんだろうな”くらいの感覚。だから“目指さなきゃ”ではなく、“あれ?私出られちゃうかも?”という感じでした。
大学と競技の両立
-高校卒業後は早稲田大学へ進学。進学理由はシンプルだった。
やっぱり大学には行きたいなと思っていました。ちょうど所沢キャンパスの近くに練習場があって、“両立できればいいな”と思って進学を決めました。
-高校卒業後に大学へ進学してプロを目指すのは、一般的なのでしょうか?
珍しいと思いますね。
両立は大変でしたけど、栄養学のゼミに所属して、解剖学も学んで筋肉の使い方を合理的に理解できるようになったのは今後の選手生活において大きな収穫でした。
学業の後も、夜10時半まで開いている練習場もあり、時間割を工夫して何とか両立していました。
-すごく大変だったのでは、、、?
そうですね、大変でした。でも、オンライン授業が増えたコロナ期でもあったのでオンライン授業は助かりました。
遠征先からも授業に出席できましたし、ただスポーツ入試の優遇は特になく出席は厳格でした。海外で時差がある中でも受講しましたし、1年次は必修科目を中心に、2年次以降で単位を取り切るよう計画的に進めました。
-理論的に競技へ取り組む姿勢は大学での学びが影響していますか?
最初は「できたらいいな」程度でしたが、他競技の仲間や知見のある友人の影響を受けて、突き詰めるタイプになりました。栄養は数値で把握し、JISS(国立スポーツ科学センター)とも連携してバイオメカニクスの知見も活用したりしています。
あと、メンタルトレーニングにも3年ほど取り組みました。緊張や対人ストレス、新技への恐怖など、自分の課題に向き合い、モチベーションの維持・改善につながったと思います。スノーボード界は感覚重視の選手が多い印象ですが、私は理論と感覚の両方を重視しています。
-若いアスリートに大学進学は勧めますか?
勧めます。知識面の学びだけでなく、刺激を与え合える仲間の存在が大きいです。
競技以外の挑戦
-引退後のキャリアについては考えることはありますか?
まだ明確ではありませんが、「伝えること」「普及活動」には関わりたいです。引退後に限らず、今も機会があれば色々なことに取り組みたいと思っています。
-競技の合間に、少しずつ新しい挑戦も始めている。
講演を一度だけやらせてもらったことがあります。受講生に向けて“オリンピックが直前に決まる、そのモチベーションの保ち方”について話してほしいと依頼されて、30分ひとりでお話ししました。最初はすごく緊張しましたけど、共演者の方が場を盛り上げてくださったおかげでなんとかやりきれました。
-終えてみて得られたのは、新しい可能性だった。
やってみたら意外とできるんだな、と。準備をすれば伝えることは難しいことじゃないんだって気づきました。今後も“伝えること”には関わっていきたいです。
-競技外で印象に残っている活動は?
レッドブルアスリートとして『Wings for Life World Run』に参加しているんですけど、あれは本当に楽しいイベントなんです。普段は有酸素トレーニングをあまりしないんですけど、15キロぐらい走っちゃう。走った後のすっきり感と、“誰かのために走れる”チャリティの要素が合わさっているのが好きですね。ここ2年は妹を無理やり巻き込んで一緒に走っています(笑)
-アスリートをキャスティングする意味をどう捉えていますか?
競技を通じた苦悩や試行錯誤、努力が報われない経験を乗り越えた視点に価値があると思います。また、美容やファッションの広告などにアスリートが1人入るだけでも、スポーツの文脈が加わり新しい魅力を生むのではないかとも思っています。
また、SNSの発信に関しては、日本にいないときでも発信できますし、多くの人に見てもらえるかなと思っています!
-最後にこれまで競技を続けてこられた原動力は何ですか?
やっぱり“楽しい”から始めたことだから、ここまで続けてこられたんだと思います。でも楽しいだけじゃなくて、大学で理論を学んだことで競技をもっと深く理解できるようになりましたね。これからも挑戦を楽しみながら、伝えることにもチャレンジしていきたいです。
それに、本当に私は“環境に恵まれてる”っていつも思います。家族や仲間、応援してくれる人がいたからここまでやってこられたし、これからも一緒に歩んでいけたら嬉しいです。なので、これからの挑戦もぜひ応援してもらえたら嬉しいです!
-本日はありがとうございました。新シーズンのご健闘をお祈りしています。
ありがとうございました。頑張ります!
応援よろしくお願いします!!
CaSpo出演実績
鬼塚選手は、CaSpoを通じた出演実績もございます。発信を通じて、SNSや店頭ビジョンでも展開され、鬼塚選手の存在感がブランドの魅力を引き立てました。
「楽しい」を原点に、理論を重ねながら世界の舞台で活躍してきた鬼塚雅選手。学び続ける姿勢や恐怖心を乗り越えてきた経験は、多くの人に力を与えるものです。
また、家族や仲間、支えてくれる人々に恵まれた環境への感謝を忘れず、今後も挑戦を続けていきます。
鬼塚雅選手への講演依頼やイベント出演は「キャスポ」にて承っています。広告出演、トークショー、体験教室やクリニック、メディア出演など、幅広い活動に対応可能です。お気軽にご相談ください。